【読書】罪の轍:昭和38年に今と同じことが起こっていた

読書記事は数冊の括りで書いてましたが、初めて1冊で書いてみます。それ程、衝撃のあった小説であり、考えさせられた小説であったのです。

 
 

流石は、奥田英朗さん。またファンになりました(笑)

 

[土塔えんじ:ご覧の提供でお送りします]

 

罪の轍

奥田英朗さん著

前述の通り、僕の大好きな作家さんでその方の新作。

 
 

奥田さんの作品で、以前に『“史実にそった”小説まとめ』に挙げた『オリンピックの身代金』を読んでいました。当時の状況を事細かく取材され、その筆力によって当時の状況が鮮明に思い描ける素晴らしい作品で、奥田作品に感銘を受けてました。

 
 

今回の『罪の轍』は、吉展ちゃん誘拐殺人事件をモチーフにした小説。そして、奥田さんの“史実にそった”小説。これは読まないと!!そんな感じで、久々にハードカバーの新刊を買いました(笑)

 
 

物語の概要

ストーリーを事細かに書くことはしませんが、安定の奥田作品、素晴らしい筆力。当時の情景や人の気持ちの移ろいが手に取るように分かる感じでした。

 
 

オリンピックを来年に控え、恐らく日本史上で一番目覚ましい発展を遂げようとしていた時代。『オリンピックの身代金』同様で、光が眩い分、その影もまた色濃い

 
 

そんな影の部分の影響をもろに受けて育った犯人。僕自身が3歳の子供を持つ親ですので犯人は憎くもあるのですが、その人生でどうにか救われなかったのか?という思いも感じ、とても複雑な心境になりました。

 
 

そんな全般的な感想でした。そして、この記事の主題:『今と同じことが起こっていた』について書いていきたいと思います。

 

[土塔えんじ:いったん、CMです]

 

第3者による根拠ない情報・誹謗中傷・優しい虐待

この小説の舞台は昭和38年なのですが、読んでいくと、

あれ?

これって、今と同じやない?

と思いっきり感じるシーンがあります。本当に、現代と錯覚するような感覚さえ感じました。

 
 

モチーフになった 吉展ちゃん誘拐殺人事件 では、この事件で日本で史上初めての以下の事が行われたとのことです。

警察がテレビ・ラジオ等のメディアを使って、

一般人からの犯人の情報提供を呼び掛けた。

当然、この小説内でもそのシーンが描かれています。そして、その後に起こったことも・・・

 
 

根拠のない情報、誹謗中傷

以前、僕は『【メディアリテラシー】富田林逃走犯の一件で見る情報の取捨』という記事を書きました。ここにも書いた通り、警察が情報提供を呼び掛ける(富田林の時は賞金付き)と、とても怪しい情報が出回るのですね。

 
 

この小説でも、出所の怪しい情報が飛び回っていた旨、書かれていました。その情報に、警察が右往左往する様も。そして、この小説に書かれているということは、それは史実なのであろうと。

 
 

現代でいうと、インターネット、SNS上で本当に根拠のない情報が飛び交ってますよね。そして、それを持って右往左往している人々を多く見かけます。昭和38年に起こったことも、現代も同じですね

 
 

中には、言われなき理由で誹謗中傷を受ける人も居たり。この小説では、言われなき理由で誹謗中傷を受けていたのは誘拐された子の親だったり・・・そして、やはりそれは史実なのであろうと。

 
 

優しい虐待(幡野広志さんの作品より)

また、こちらも以前に書きました『【読書】“親が子に伝える”系の本まとめ』の中の幡野広志さん。この方は、癌を患っておられます。幡野さんが癌になって感じられた事として、

優しい虐待


という表現をされているものがあります。これは、幡野さんのような方を不幸な人と捉え、 根拠もなく無責任に優しい言葉をかけて励まし結果、励まされた(しんどいはずの)人の負担を更に増やすことを指します(・・・と僕は理解している)。この小説内でも同じく、子供を誘拐され、後にその子を失う親に対して行われています。

 
 

読んでいてともて恐ろしく、また現代と何も変わってないのだなと思いました。また、何か虚しさも感じました

 
 

著者:奥田さんのインタビュー

この記事を書くにあたり、この小説や当時の事件のことを色々と調べていると、著者:奥田英朗さんのインタビュー記事を見つけました。

 

奥田英朗さん「罪の轍」インタビュー

 

本を読んだ後だと、このインタビューには重みを感じます。こういう問題?というか、人間の行動・振舞いについて今一度、考え直してみたいなと思いました。

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