【読書】“史実にそった”小説まとめ
史実にそった・・・と言っても、ゴリゴリの歴史小説ではなく(笑)記憶に新しいというか、最近の史実にそった小説の紹介です。
[土塔えんじ:ご覧の提供でお送りします]
こういう小説って、個人的に直ぐに入り易いんですよね。
オリンピックの身代金
奥田英朗さん著
(※文庫本は上下巻2冊です)
来年2020年に東京オリンピックが開催されますが、この小説の舞台は1964年の東京オリンピック。
多分、これから東京オリンピック2020の開催に向けて、東京オリンピック1964の映像なんかをよく見ることになると思います。高度経済成長の象徴のような東京オリンピック1964、その映像を見る限り白黒映像であっても、本当に華やかさを感じます。
でも、この小説を読むと、少し印象が変わります。目にする光輝く姿ではなく、その光に隠れた影の部分がこの小説の根幹なんですね。テレビでは見ることが出来ない影の部分を学べる・・・という点で、とても貴重な小説かと思います。
ネタバレするといけないので詳しくは書けませんが、物語はフィクションとしてもこの小説に書かれた時代背景って、実際のものなんだろうな・・・と感じます。その描写のリアリティが凄い。
奥田英朗さんは、とても好きな作家さんであります。『インザプール』『空中ブランコ』『町長選挙』の三部作を読んでファンになり、とても面白い印象の作家さんと言うイメージだったのですが、この『オリンピックの身代金』を読んで、良い意味で大きく裏切られたのがとても印象に残っています。
罪の声
塩田武士さんの著書。
最近、文庫本が出て人気が再燃しているようですのでご存知の方も多いと思いますが、小説の舞台が『グリコ森永事件』ですよね。
実際、僕が小学校くらいに起こった昭和を代表するような大事件。駄菓子屋さんでお菓子を買うのも、グリコ製品、森永製品は避けてた記憶があります。本当に怖かったですね。
事件で使われた脅迫の音声が子供の声で、その子供の声が自分の声だった・・・そんな導入部分。凄い設定ですよね(笑)また、罪には問われないだろうが、事件に間接的に関わった人たちが苦しむ。そんな視点での書き方も凄いなと感じます。
この小説も『オリンピックの身代金』と同様、とてもリアリティのある小説。塩田作品の特徴でもあるとおもうのですけど、本当にフィクションなのか?と思ったりしました(笑)また、リアルタイムで事件を感じていたので、この小説は懐かしさとその当時に感じた怖さを思い出しながら読めました。
[土塔えんじ:いったん、CMです]
総理にされた男
中山七里さんの著書。
こちらは、本当に記憶に新しい2011年頃から3年間位の日本が小説の舞台。政権を取った民主党が大コケして、安倍・自民党が政権を奪い返した時代がそっくりそのまま描かれてます。政党名や政治家の名前は、当然、違いますけど(笑)
前に紹介した2作品よりかは、ぶっ飛んだ設定。モノマネをしている役者が、時の首相に取って代わって政権運営を進める・・という感じのストーリー。
物語自体も面白いのですが、政治の科書的な位置付けとしてもとても優秀。40過ぎたオッサンが、『へー、こんな感じで政治って運用されてるんや~』な感想を漏らしてました(苦笑)
ただ1点、この小説を読むときの注意点として、著者の政治思想が入っているのかな?と感じる所があります。あくまで、“著者の思想”であってそれが本当に正解かどうかは分からない・・・と思っておいた方がベターかな?と読みながら感じるものがありました。
それは、僕の思想と違うと感じたところがあったから。そもそも、政治に正解って多分ないから。
ただ、小説の中でこの著者の思慮深さも感じていて、何となくですがそういう議論を出させる・・・という狙いを持って、この物語を書かれているような気もしました。もしそうであるなら、この中山七里さんと言う作家さんは、天才中の天才。この作品も、深い小説だと思います。
中山七里さんの違う小説も読んでみたいと感じております。
史実に沿った本の醍醐味
史実に沿った小説の醍醐味は、『その事件で実はこうだったんでは?』という著者の空想が楽しいんだと思います。
時代背景を知っていればなおのこと、知らなくても逆に勉強になる。こういった共感も勉強もできる本と言うのは、なかなか素敵だな~と感じます。また、こういった内容の良本に出会いたいですね~
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